大判例

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東京地方裁判所 昭和39年(むのイ)630号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(昭和三九年九月二四日勾留中のまま起訴された被告人に対し、その勾留の執行を同月八日から同年一〇月三日午前一二時までの期間を定め住居制限その他の条件を付して停止する旨の裁判がなされたところ、検察官より右裁判に対する準抗告の申立がなされた。)

よつて判断するに、検察官提出の疎明資料によると、本件公訴事実たる「被告人が博徒錦政会渋谷支部長兼三本杉一家四代目総長であつて、他の二名と共謀の上、被告人が交通事故で約二週間の傷害を受けたことにいんねんをつけ昭和三九年四月下旬ころおよび六月一五日ころ、錦政会渋谷支部の事務所である被告人方自宅で柚木秀吉、小平三千夫を脅迫して三〇万円を喝取しようとしたが未遂に終つた」との事実を認めるに足りる相当な理由があり、本件犯行の態様、被告人の供述態度、犯行後の行動、組織内における地位、輩下の者の行動等諸般の事情に鑑みると、被告人が起訴された現在もなお、被告人に罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由ならびに逃亡すると疑うに足りる相当な理由があり、さればこそ原裁判官は勾留の取消その他の処理によらず勾留の執行停止をしたものと認められる。

そうして右執行停止の理由は、被告人の叔父岸忠三郎(被告人の実父の弟)が脳出血症により同月二八日午後二時三〇分に死亡し、同人の葬儀は同年一〇月一日に執り行われる予定であるところ被告人は叔父の葬儀に出席したいということであつてこのように勾留中の被告人の近親者の葬儀に参列するため、相当期間勾留の執行を停止することは、刑事訴訟法第九五条の適当と認めるときのひとつの場合であると解されるのであつて、かかる事情が存してもなお勾留の執行停止をするのが適当でないというためには、事案に照し停止期間中にあらたな罪証隠滅を図り、又は具体的に逃亡を企図する等の事実を推認せしめるような事情の存在が要求されるが、本件のばあい、検察官は恐喝未遂の公訴維持のため必要とされる証拠の蒐案を一応終り、共犯者は依然勾留中であつて、現段階においてあらたなる罪証隠滅を企図し或は証人威迫を計るような状況は推認できない(過去において被告人の輩下の者が被害者に対し威迫的言動に及んだとの事実は認められるけれどもこれをもつて直ちに被告人が現在罪証隠滅等を企図しているとは言えない。)し、過去において捜査官憲において長期間被告人の所在を探知できなかつた事実があつても、これをもつて直ちに被告人が勾留執行停止の機会を利用して逃亡を企図しているとする具体的事情とすることはできない。

したがつて、原裁判官が適当と認める理由があるとしてなした本件勾留の執行停止の裁判はかならずしも妥当を欠くものとは言えない。

(なお、本件準抗告申立の理由につき若干付言するに、検察官は被告人に罪証隠滅、逃亡の虞があると主張し、結局刑訴法第八九条四号五号にいわゆる権利保釈の除外事由があることをもつて勾留の執行停止を適当でないとする理由とするもののようであるが、勾留の執行停止、殊に冠婚葬祭を理由とする執行停止のばあい保釈のような長期の釈放を予定する制度と同一に論じられない面があることと、権利保釈の除外事由があつてもなお裁量保釈が許されることをも考慮すべきであるから前示のとおり判断した次第である。(高橋幹男 小泉祐康 長谷川正幸)

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